そして季節は夏(ゲーム中)。
夏休みの間に詩織に何度かアプローチを試みるも、やはりつれない返事しかもらえな い。
そんなヒロインのガードの固さにクラクラしながらも、ジャン君はその影で必死に己 を磨くべく、夏休みなのに勉学に励んだりとか、鏡の前でハンサムボーイを気取る練 習をするとか、喫茶店で友人とダベってトレンディな話題の情報収集をするとか いう、涙ぐましい修練の日々を送っていた。というハードな毎日を送ったためか、ジャン君は水泳部の夏合宿の途中で倒れてしま う。
そんなジャン君の前に現れたのが、同じ水泳部の女の子、清川 望(当時15歳)。 彼女はジャン君に「しっかりしろい」と豪勢に水をぶっかけ、さっそうと立ち去って いった。
そんな豪気な彼女の後ろ姿を見つめるジャン君。ゲームのシステムから見れば、同じ水泳部の女の子がこんな感じで登場するイベント は、既に組み込み済みのものである。特に驚くものでも喜ぶものでもない。
だがしかし、恋愛でいまいち冴えのない日常を送っていたジャン君にとって、彼女の 登場のタイミングはあまりに絶妙だった。まさに、救いの女神を見た想いである。
そんな訳で、合宿後に彼女の家に電話をかけてデートに誘ってみると、これがアンタ なんかあっけなく成功。初デートを控えて浮かれるジャン君(すなわち私)。このゲームの「デート」は、実はかなりルーチン化されている。
約束した場所に行って「待った?」「ううん、今来たとこ」というお決まりの台詞を 言い合い、映画を観たりとかボーリングやったりとか枯れ葉散る公園でロマンチックな 気分に浸ったりとか(うぷぷ)した後、女の子と「映画、面白かったね?」とかいう感 じの会話をして、その会話の内容で女の子の好感度が適当に上がる、という仕組みにな っている。
もちろん、女の子にはそれぞれ好みのデートスポットがあるのでそれを考える必要は あるし、会話の内容はその後の展開にかなり影響する。デートを極めることが、ときメ モ攻略の基礎となるのだ。だが、今回ばかりは嬉し恥ずかし初デートということもあり、もはやそんな理性的な 事を言っている余裕はないのであった。
デートに誘ったコンサート会場で「待った?」「ううん、今来たとこ」を聞いて盛り 上がり、コンサートが終った後の「良かったよね」「良かった良かった」の会話をする だけで盛り上がり、最後の清川の「今日は楽しかったよ。また誘ってくれる?」の台詞 を聞いてさらに盛り上がる。
ああもう始終盛り上がりっぱなし。良かったなジャン君(すなわち私)。
このイベント以後、何故か知らないが次第にジャン君はモテ始めるようになる。
まず、日々の鍛練の成果が出たのか、パラメータが上昇するに連れて次第に登場する 女の子が増え始めて来た。1年目の後半に、文系パラメータを上げると出てくるメガネ っ娘・如月未緒と、芸術系パラメータを上げると出てくるインチキアメリカ人・片桐彩 子の2人が登場。場をさらに盛り上げる。
そして、これに調子付いて本命の詩織にデートを申し込んだところ、ついに承諾して くれるようになったのだ。これは大きな進歩だ。
「デートに誘って失敗しても好感度は上昇する」とマニュアルには書いてあったので 、もしかしたらそれの影響なのかもしれない。やはり、恋はあきらめずにプッシュプッシュが基本だ と、改めて認識。高見山は偉大だったのだ(突き押し相撲が好きな人だけ笑)。
その後、お正月に詩織を誘って初詣とシャレ込んだり、バレンタインデーに義理チョ コを貰いまくったりと、そこそこ楽しいエブリディを送りながら、楽しく1年目を終了 。
この頃になると女の子をデートに誘うのも容易になって来ていたので、今まで関係が 低かった娘とちょっと付き合って好感度を上昇させる、なんてジゴローな事を楽しむ余 裕も出て来ていた。
詩織もなんかジャン君に好感を持ち始めているようだし、この調子でいけばもうジャ ン君の青春はバッチリオッケーさ。ははは(乾いた笑い)。
だが、そう簡単にこのゲームはジャン君をハッピーにはさせてくれなかったのだ。
続く。
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