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from Beyond
2000年8月 夏休み乱読レビュー大会 |
乳でけぇ!(脊髄反射的な感想)
基本的には「ヨコハマ買い出し紀行」同様、どこかノスタルジーを感じさせる世界観の中で暮らすちょっと不思議少女入ったヒロイン(川上清美)とそれを巡る人達の姿を、「いいねぇ、こういう雰囲気……」としみじみと呟きながら心暖めるタイプのマンガ。リアルタイムで田舎に暮らす(このマンガ程の田舎ではないけど)私から見ると、ちょっと田舎暮らしを美化しすぎているんじゃ? と思ってしまう所もあるし、どっちかと言えば話がマッタリして来る後半よりは、「田舎暮らしから脱却したい」と日頃思っている主人公と、逆に「都会的な生活をしている母親になじめず、田舎町で暮らす父親の元に逃げて来た」ヒロインという、田舎に対する感情の対比の構造が明確だった序盤の展開の方がマンガとしては好きなんだけど、でもマンガ全体から感じるマッタリした空気はとても心地良いものがあって清々しい読後感に浸れるので、素直に許す。
つうか、最初は恋敵のつもりだったけど結局ヒロインに憧れちゃう年下の女の子・西野かつみって可愛いよね?(←誰に同意を求めているんだか)
近未来海洋冒険SFマンガ。「星雲賞」のコミック部門にノミネートされているのを知って、試しに購入してみた次第。
話としては、過去に海洋事故で父親を失った主人公の少女が、その事故が起こった場所(沖縄近海の海上都市・通称スタンダードブルー)へやって来て色々な経験をして成長して行く、という話。近未来っぽい海洋メカが沢山出てくる辺りはSFっぽいが、物語の基幹となっているのはいつの時代でも変わらない親子の愛情や人同士の心の交流を描く点にある。特に、最終回で父親が死んだ場所に赴くエピソードは、絵的にも物語としても非常に美しい。あと、個人的には主人公が住み着く会社で働いている、「待春」というキャラがいい感じ。イルカ好きなのに主人公みたいに素直に「イルカにゃんではにゃーん!」と言えないところとか(←主人公も言ってません)、理想論ばかりを訴える環境保護団体と対等以上にやり合う姿なんざ、「このキャラ、絶対過去に何かあったに違いないね!」と思わせるに十分だ。もうちょっと連載が長く続いていたら、彼女のこともサポートされていたのかも。
WOWOW でやってた同名のアニメのコミック版。こっちの方が原作っぽいというか、コレを読むと「よくこんな変な作品をアニメにする気になったものだ」とか思ってしまう。
お話は、謎の宇宙船が落下した影響でクレーターが近所にできている街を舞台に、変な宇宙人(ニア)と同居して暮らしている貧乏予備校生の主人公(まゆ子)の日常生活をユーモラスに描いたものなのだが、特筆するべきなのはやはりその独特のギャグセンスだろう。金欠で欠食気味な主役二人の漫才はもちろんのこと、妙にインド風に感化されたコソビニカレーオヤジ(宇宙人)、妙に中国風に感化されたウンコアンテナ娘(宇宙人)、そしてまゆ子の予備校生仲間で宇宙人マニアの女子など、「ちょっとヘンな宇宙人が日常に溶け込んでいる」様をユニークに描けるセンスは素晴らしい。また、それでいて主人公のまゆ子や下宿している銭湯の住人には、それぞれそれ相応の過去があったりする辺りにも、読者の興味を引くことに成功していると思う。この絵柄でギャグとシリアスの両方をやれるってのはいいね。
コミックバースで連載中のマンガ。コミケで買った評論系同人誌に「私にとってはエロマンガです」とその妖艶っぷりを絶賛していたので購入(それで購入するのもどうかと思うが)。
話のパターンとしては、いわゆる「血友病」モノに属する。自分自身が吸血病という遺伝性の病気を持った家系の人間であり、自らもそれに発病しつつあるという事実を姉(千砂)から知らされた主人公(一砂)の苦悩を描いた、愛と悲しみのドラマを描くのがテーマ。閉塞的な環境下で繰り広げられる姉と弟の哀しい愛が、せつせつと描かれている。また、他にもこの姉弟をどうにかして悲しい運命から救い出そうとする人達の感情描写なども巧みで、物語の悲劇性を高める事に成功している。
「弟の血の欲求の発作を抑えられるのは姉の血だけ」という閉塞感溢れる設定は実に魅力的なのであるが、このマンガが現在ここまで評判になっているのは、やはりその設定を淫靡に、哀しく、かつ美しく描くことができる作者の画力があってこそだろう。主人公の姉・千砂の影のある色っぽさを観てしまうと、確かに「私にとってはエロマンガです」と語った人の心理も納得できるというものです。このマンガの唯一の欠点は、(月刊連載なのにも関わらず)物語の進行が遅くてなかなか話が先に進まないことくらいだろう。
4巻ラストで一砂が千砂を押し倒してから8ヶ月以上経ちましたが、コミックス5巻はいつ発売されるのよ?
講談社週刊少年マガジン編集部が自ら作った、「ラブひな」公式ファンブック。原作の方では、当初の目的であった「東大合格」「ヒロインとのラブコメ」にとりあえずケリが付いて落ち着いた(=終わりが近い?)状況を受けつつ、アニメ放送中に出せるグッズは全部出してしまえというノリで作られた(に違いない)本。
基本的なフォーマットは、「セーラームーンの謎」などの、いわゆる「謎本」に準じている。ただ、さすが講談社が自ら作って原作者が監修したということもあってか、その内容は至って読者本位でマジメ、かつ親切丁寧に作られている。
謎本の中には、明らかに「こんなの読むのはキャラ萌えファンだけだろう」と見限って読者を最初からバカにしているようなものもあったりするのだが(女性キャラの名前の後ろに全部ハートマーク付けるとか)、この「ラブひな0」はライターがあくまで読者の「ラブひな」好きな意思を尊重して作ったものであるような感覚を受けた。最後でライターの実名が出てくる辺りにも、この本作った側の本気っぷりが伺える。
ここまで丁寧なファンブックを出版社自ら作ってもらえるなんて、「ラブひな」はホントに幸せな作品だ。
最初は恵比寿でやってる「ロッタちゃんと赤いじてんしゃ」を観るつもりだったのだが、恵比寿まで行くのが面倒なので、銀座でやってたこっちを鑑賞(いいかげん)。
作品としては、もはや知らない人はモグリ!(ブロンド幼女マニアの)と言われるほど有名なスウェーデン映画であり、私としても今更「ロッタにゃんではにゃーん!」とか「ロッタちゃんのデコが! デコが広いよ!」とか言いたくないので言いません(手遅れ)。
まぁ、スウェーデンの田舎町で明るく楽しく元気に暮らすロッタちゃんの可愛らしさを鑑賞する映画ですね。あと、「ロッタにゃんではにゃーん」方面以外で興味深かったのは、この映画で描かれている、スウェーデンの子供達の生活っぷりだ。彼らのクリスマスや復活祭に賭ける意気込みはなんかこうハンパどころの騒ぎではなく、父親がクリスマスツリー用の樅の木を買って来れなかったために落胆して涙を流したり、父親が復活祭用のイースターエッグのお菓子を買って来れなかったために落胆して涙を流したりと、スウェーデンの子供達が如何にクリスマスや復活祭に命を懸けて臨んでいるのかがよく判った。文化の違いって面白いッスね(そういう問題か?)。
とあるサイトで「スタッフロールの最後に "for Fujiko F. Fujio" って出てくる」と聞き、往年の藤子Fファンとしては行かねばなるまい! と思って鑑賞。決して、テトラ(映画に出てくるロボット)の声を林原めぐみが担当しているから行った訳ではないです。念のため(←誰に同意を求めているんだか)。
映画としては、テトラと出会った少年少女達の一夏のSF体験を描いた、名実ともにジュヴナイル感覚あふれるお話。序盤の導入部分はちょっと話の進み方が性急かな、とか思う部分もあるものの、全体としては夢と希望に溢れた良い映画でした。中盤〜後半の悪い宇宙人との戦いっぷりも格好良いし、最後のシーンのオチも効いてる。大人も子供も素直に楽しめる、良質のファミリー映画だと思った。
個人的には、最後のシーンがちゃんと映画冒頭に繋がって話が循環していると気付いた時に、なんかこう得も知れない感動を覚えてグッと来ました。言うなれば、「キテレツ大百科」のタイムマシンの話を初めて読んだ時に、「これが、SFで言うところのタイムパラドックスなのか! おもしれぇ!」って思った時のトキメキ感に似てます。まぁ、"for Fujiko F. Fujio" ってあえてスタッフロールに書いた意気込みは伊達じゃなかった、って事ですね。
こういう藤子Fっぽい要素を持った映画は日本じゃないと作れないと思うので、これ作った監督さんやスタジオには今後も期待したいです。